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英語に自信がないを終わりにする

英語には敬語がないって本当?~エーゴのケーゴの話 その2~

約6分

英語にも、敬語はあります!

当然のことですが、英語にも敬語はあります。前回は、「敬語」ということに限定せずに、広く「人間関係のあり方の表現」だと考えるとよいというお話をしました。

母語が日本語であれば、日本語で「丁寧に話したい」とか「ぞんざいに話したい」とか、その度合いを調節しながら話すことは簡単にできますよね。英語でも、さまざまなシチュエーションに合わせて、ぴったりの表現を選べるようになっていただきたいと思います。

今日は、この丁寧さの度合いを表現できるようになるために、どういう観点から勉強していくとよいか、以下の4つの視点からお話したいと思います。

  1. 語彙的丁寧
  2. 文法的丁寧
  3. 婉曲的丁寧
  4. 重畳的丁寧

1.語彙的丁寧

語彙的丁寧とは、「丁寧・ぞんざい」「フォーマル・カジュアル」などの差が、単語そのものにあらわれている場合を指します。

たとえば、お母さんのことを一般的になんといいますか? 基本的には mother ですね。自分の母親のことは、親しみを込めて mom と呼ぶと思います。お友達のお母さんのことを呼ぶときも、カジュアルに ~’s mom と呼んだりします。mommy というと、さらに小さな子供が使うような呼び名になります。このように、同じ母親を指すのに複数の単語があり、それぞれニュアンスや使われる場面を表現し分けることができますね。このようなものを「語彙的丁寧」だと考えます。

別の例も見てみましょう。相手に感謝するときの表現を、いろいろ考えてみたいと思います。まっさきに思いつくのが Thank you. ですね。ほかにも I appreciate your help. のような言い方をご存知の方も多いでしょう。これだと、少し固く響きます。また、 I am grateful. なんていう言い方もいいですね。これはある程度フォーマルな場面で使ってもよい表現です。それから gratitude は、感謝をあらわす名詞です。Please accept my gratitude. とか、We would like to show our gratitude. なんていうと、だいぶフォーマルに固い感じで謝意を表現することができます。

このように、似たような意味をあらわす語の中でも、丁寧さやフォーマルさの度合いが違うものがあります。こういったもののニュアンスの差を確認していくようにしたいですね。

2.文法的丁寧

文法的丁寧は、簡単にいってしまうと Can you ~? よりも Could you ~? の方が丁寧だ、というアレです。

でも、なぜ Can you ~? よりも Could you ~? の方が丁寧なのでしょうか。これにはちゃんと理由があります。それはここで書くにはちょっと長くなってしまうので、割愛させていただきます。みわ文法の「動詞 たて糸編」、またはストアカ講座の「あなたの知らない英語助動詞の世界」でこの点に触れていますので、ぜひこちらを受講してみてくださいね。

3.婉曲的丁寧

「婉曲的丁寧」は、言いたいことをダイレクトには言わず、ほのめかすような表現をすることを指します。たとえば、「窓を開けてくれる?」と言う代わりに、「ねえ、ちょっと暑くない?」なんて言うことありますよね。直接的に「窓を開けて」と言わずに相手に窓を開けてもらうことを期待する、このようなケースは「婉曲的丁寧」だと考えてよいでしょう。「丁寧」とか「遠慮する気持ち」とか、ときには「貶める気持ち」があるような場合に、婉曲的な表現が使われるのではないでしょうか。

婉曲は、なにも日本人の専売特許ではありません。たとえば、「彼は無職だ」なんてはっきり言いづらいときは、He is between jobs. なんて言ったりします。bald(禿げている)と言ってしまうとダイレクトすぎると感じるならば、a little thin on top のように言うこともあります。下の絵は、Googleで「euphemism(婉曲)famous examples」を検索するといちばん最初に出てくるページに載っているものです。サンタさんもエルフたちに「クビだ!」とは言いづらいんですね。

(Cartoon by Kipper Williams)

4.重畳的丁寧

文は、短ければ短いほど「強い表現」「ぞんざいな言い方」「カジュアルな言い方」であることが多いといえます。逆に、どんどん文を重ねて、長く長くしていくことで、「丁寧」「遠慮」などをあらわすことができるのます。「重畳」とは、積み重ねるという意味です。重ねて長さをもたせることの表現効果から生まれる丁寧だといえるでしょう。

たとえば、単に Open the window. と言ったら、強い命令口調ですね。または、語気を強めずに、軽い感じで言えば、ごく親しい相手なら「窓をあけてみて」というぐらいの雰囲気に響かせることもできます。これを Can you open the window? と長くすれば、丁寧さの度合いを上げることができますね。Would you please open the window? のように、文法的にも丁寧にし、さらに please もつけ加えれば、もっと丁寧さが増します。これはいくらでも長くすることは可能ですよ! やりすぎなぐらい長くするのであれば、No offence is intended but it would be truly appreciated if you could open the window for us. なーんていうこともできるわけです(笑)。

同じ「窓をあけてほしい」という意図を伝えるのに、短いものから長いものまで、さまざまなニュアンスで伝えることができるのです。

組み合わせ次第で自由自在!

「語彙的丁寧」「文法的丁寧」「婉曲的丁寧」「重畳的丁寧」、それぞれご理解いただけたでしょうか。これらの要素をうまく組み合わせることで、丁寧に言ったり、親しみを込めて伝えたり、はたまたイヤミを言ったり、本当に自由自在に表現ができるのです。勉強する際には、ぜひこれらの要素をひとつひとつ確認し、肉付けしていってくださいね。

こういった表現に自由度が増してくると、外国語であっても「自分の言葉で話している」という感覚になると思います。これは、フレーズをたくさん暗記するだけでは、どんなにがんばっても、いつまで経っても、できるようにはならないものです。フレーズを暗記するのではなく、仕組みを理解し、使えるようになる。そうして自分の言葉で話せるようになる。それが、外国語を勉強する醍醐味というものではないでしょうか。

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